夏の魔法
僕が魔法学校2年生なったある冬の日、僕は授業を受けずに屋上で寝転がっていた。地面が冷たいのが分かる。それを気にせずに寝転がっていると、英太を思い出して懐かしくなった。
今日と同じような寒い日、僕と英太は外で寝転がったことがある。あの時も地面が冷たく、気にせずに笑っていた。
僕は、英太が好きだった。いつも僕の側にいてくれた。その事が、僕にとって1番嬉しかった。
ふと校庭から、怒鳴り声が聞こえる。僕が立ち上がり、校庭を見下ろすと、見覚えのある人が校庭を走っている。
僕は、何かがあってあの先生に走らされているのか、と思った。あの先生は厳しいが、優しい先生だ。
気分が悪そうな人に声をかけ、保健室で休め、と言ったり、友達同士のケンカを止め、話を聴いたり。僕が今までに見たことの無い先生だ。
僕は、再び寝転がっていた。ぼんやりと空を見上げていると、氷翠が「美影!!」と叫び、僕の近くに来る。
僕は再び立ち上がり、氷翠に「氷翠じゃん、どうしたの?」と笑いかけた。
無理をしている、と言われてみれば、そうかもしれない。多分、氷翠は何も知らないだろう。
「…なんで、今日は図書館に居ないの?いつもは居るのに…」
氷翠が心配そうな顔で、僕を見た。氷翠自身が、氷翠がしている心配そうな顔に気がついているのかは知らないが。
「…気分転換だよ」
僕は、屋上のフェンスに手をかけ、街を見下ろした。氷翠は、僕の近くによってくる。
「こうしていると、辛いことや苦しいことを忘れられる。そんな気がするんだ」
僕は、精一杯に笑顔を作った。そのまま、街を見下ろし続けていると、『苦しかったら、無理をしたらダメだよ』と言いながら、笑った英太の姿が脳裏に浮かぶ。
僕は、氷翠を振り向いて再び笑った。上手く笑えているのか不安だったが。氷翠を見ると、氷翠の表情が曇っている。…笑えていないのか、と思ってしまった。
僕は、人の表情を伺ってしまう時がある。僕の家庭環境で、こうなってしまったのかは分からないが。