夏の魔法



朝食を終えた僕と琥白は、私服へと着替えた。そして、僕は1人で書店に向かって歩いていた。この道は人通りが少なく、今の時間帯は全く人がいない。すると、僕は見覚えのある人と出会ってしまった。

「…美影か。元気だった?」

僕に声をかけてきたのは、僕の生みの親。

「お母さん、お父さん…このお兄ちゃんは誰?」

生みの親に手を繋がれた小さな女の子が、僕に向かって指をさしていた。

「ねぇ。お母さん、お父さんってどういうこと…?」

「え、私の両親だけど…?」

僕は、その女の子に驚いていた顔を見せる。女の子は、意味が分からずに首を傾げるばかり。

「名前は?」

「私は、篠原 葵(あおい)!4歳!」

葵ちゃんは、幸せそうに笑う。その様子を見る生みの親は、僕らの時の表情とは逆だった。

「…葵ちゃん。両親は優しい?」

「うん!優しいよ!」

「良かったね。あ、僕は…近藤 美影って言うんだ」

「美影お兄ちゃん…」

僕は泣きそうになりながら、葵ちゃんを撫でた。

「…ありがと!」

「美影は、葵の血が繋がった兄なんだよ。お母さん達は、美影が好きだったんだけどね」

生みの母が葵ちゃんを抱きしめた。葵ちゃんは、僕を見て驚いていた。僕は、視線を地面に落としている。

「何がだよ…」

僕の声が震えている。葵ちゃんは、僕を見て固まっている。

「何が『好きだった』だよ。僕と英太で遊んで、『お前はいらない子だ』と言って僕を突き飛ばして…!僕らを愛してもくれなかった…僕を簡単に見捨てた…っ!そんな人に好きだ、なんて言われたくない!!」

「それは違うんだ…」

生みの母が言った。僕は「何が?」と低い声で言うと、生みの母が口を開く。

「本当は…」

「正直に言ってあげてよ。美影お兄ちゃんに、嘘をついたらダメだよ」

葵ちゃんが生みの親に笑った。その葵ちゃんを見た生みの親は、僕をあの時と同じように突き飛ばして笑う。今でも震えてしまうほどに怖かった。

誰でも良い…助けて…っ!!と心の中で叫んだ。
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