夏の魔法
僕は、中学生時代の頃を思い出していた。
「ねぇ、美影」
「どうしたの」
僕は、隣を歩く英太に問いかけた。そう聞いても、英太は無言のまま。仕方なく、英太を見ると、英太は後ろにある公園を親指で指をさしていた。彼の言いたいことは、すぐに分かる。
「こんな時間に遊んでたら、お母さんに怒られるでしょ」
「分かってるけど…」
「…頼む、美影」
英太は、困った顔で僕を見る。……僕もこんな顔をするのだろうか。と、英太を見ながら思った。
「美影もそんな顔をするんだね」
英太が笑顔になった。訳が分からずに立ち止まっていると、英太が「美影、困った顔してたよ」と言った。
「無意識だよ。英太も困った顔したでしょ」
「僕も無意識だよ」
「また、休日に遊びに来ようか」
僕もこの公園で遊びたかった。しかし、今は下校中。遊ぶ時間など無かった。
「そうだね」
僕と英太は、同時に歩き始めた。すると、後ろから「おーい!」と声がする。後ろを振り返ると、僕達と同じ制服に身を包んだ少年が、自転車に乗っている。
「…えっと」
少年は僕と英太の顔を交互に見つめ、首を傾げた。僕と英太は双子だ。顔と身長、体型や髪型が一緒で、見分け方もない。
「…どっちが英太だ?」
「僕だけど…」