海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
「……実際に目にするのは初めてで半信半疑だった。けれど俺の記憶に間違いがなければあの七宝の紋章は、各国の戦場を渡り歩き、数々の戦を早期収束へと導き、被害を最小限に抑えた伝説の傭兵隊長の意匠。傭兵隊長というのは実はひとりではなく、熊のような風貌のふたり組。父子であろうとまことしやかにささやかれていた傭兵隊長の通り名は、鬼熊の戦神だ。エレンがその鬼熊の戦神の意匠の七宝を持っている意味……。なによりエレンの淡い金髪と透き通る水色の瞳。果たしてこれの、意味するところは……!」
 しかもマーリンさんはさっきから、鬼気迫る表情でずっとブツブツつぶやいている。これもまた、おっかない。
 次の瞬間、ついにマーリンさんが、アーサーさんの手を振り払う。
「ぅおっ!」
 アーサーさんが衝撃でうしろにのけぞる。
 その隙に、額にクッキリとチョップの痕を刻んだマーリンさんが、食い入るように私を見つめて口を開いた。
「……エレン、これを返しておく。他の荷物も検査済みで、そちらはトレッドに船長室に戻すように言ってある」
 ん?
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