海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
だけど私の髪を見て泣く母ちゃんの姿が、胸に苦しかった。
それでも、親不孝とそしりを受けたって、譲れない夢がある。
「母ちゃん、親不孝な娘でごめん! だけど私、ちゃんと帰ってくるから! 母ちゃんに、異国の土産をどっさり抱えて、帰ってくるから!」
耐え切れずに、木陰から身を乗りだして叫んだ。
私の叫びを受けて、窓枠の陰に隠れていた母ちゃんが、姿を覗かせた。
母ちゃんの透き通る空色の目が、涙に濡れていた。
「エレン……絶対に帰ってきて! どうか気をつけて、いってらっしゃい!」
満面の笑みを浮かべた母ちゃんが、遠い私に向かって叫んだ。
儚げでたおやかな母ちゃんの、こんな声を聞いたのは初めてだった。
「母ちゃんありがとう! いってきます!」
私は母ちゃんの微笑みを胸に、故郷の地を後にした。