海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
港に到着した私は、ポリポリと頭をかきながら手元の乗船証を眺めていた。
乗る船には、すでに交渉を済ませている。あらかじめ運賃として前金を納め、乗船証も手にしていた。
それでも航海中の船に、お客様というのはあり得ない。
料金を収めてなお、航海中は厳しい下働きが課せられるという。耐えられるかと船長から厳しく問われたが、私に否やはなかった。
「えーっと、船はどこだ?」
出航時刻が迫っていた。けれど肝心の船が、どこなのかわからなかった。
探すのは、四層甲板の大型帆走商船。
サイズからしてすぐにわかるだろうと踏んでいたのだが、もしかしたら停船場所に関する指示を、なにか聞き漏らしていたのかもしれない。
キョロキョロと乗る船を探してさまよう私に、方々からの視線が突き刺さる。
乗船証を取りにきたときにも、こうした下卑た視線は感じていた。
あまりいい類いの目でないことは、肌でピリピリと感じる。
港というのはやはり、柄が悪いの一言につきた。
「なんだよ坊主、迷子かぁ?」
けれど今日は、間が悪いことに暇を持てあました漁夫が声をかけてきた。
こういう輩は相手にしないのが一番だと本能的に悟り、目を合わせないようにして無視を決め込んだ。
「おいおい坊主、無視たぁつれねぇじゃねぇか」