海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
憂い顔のまま、陛下がうつろに宙を仰ぐ。そんな陛下の姿からは、どことなく懐古の情が滲み出るようだと思った。ただし、ここで言う懐古には単純な懐かしさだけでなく、多分な後悔が含まれていると感じた。
「陛下、捕縛後の船内に当該の女性がおりましたら、必ずや適正に保護し、陛下の身許にお連れいたします」
俺は力強く陛下にうなずいた。
「ふむ、頼んだぞアーサー」
うなずき返す陛下の水色の目には、涙が滲んでいた。
――これが、出航前夜の陛下との一幕だ。
「……ふむ。輝くばかりの淡い金髪と透き通る水色の瞳の五十がらみ……」
すべての特徴が、食堂で聞かされたエレンの母上にピタリと合致していた。
初対面のエレンに対して感じた、なにか。おぼろげであったそれが、ここにきて明確な形を結んでいた。
……エレンは間違いなく、陛下が探し求める女性の娘だ!
そしておそらく鬼気迫る表情でエレンに母親のことを問うたマーリンもまた、俺とは別の切り口からエレンに対し、なにか思うところがあったのだ。