海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
「やめろよっ!?」
 けれど乱暴に手首を掴まれて、ギョッとして振り返った。
 漁夫の男と、視線がぶつかる。
「ってお前ぇさん、えれぇ綺麗な髪と目をしてんじゃねぇか? 女だったらその顔だけでガッポリ稼げたっつうのに惜しいやなぁ……いや、お前ぇさんなら男でもイケっかもしんねぇなぁ」
 舐め回す様ないやらしい目にぞわりとした。
「やめろっ! 放せよっ!」
「ヒッヒッヒッ。よくよく聞きゃぁ、声まで鈴の音が鳴るようじゃあねぇか。なぁ?」
 振りほどこうとするのにびくともしない男の力に恐怖が募る。
「……アァッ!」
 ギリギリと掴まれて、手首が軋みを上げる。痛みと恐怖で、小さな悲鳴が口をついて出た。
「なんだよお前震えてんのかぁ!? どれ、俺が慰めて……」
「おいエレン、なにを遊んでる!? さっさと船に乗らないか、お前が最後だ!」
 突然背後からかかった声に、私の腕を掴む男の力が緩んだ。その隙に、反射的に男の手を振り払う。
「アーサーさん!」
 振り返れば、声の主は私が乗る商船の船長のアーサーさん、……だよな?
 ……な、なんだよ!?
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