海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!

 マーリンにズリズリと一メートルほどを引きずられたところで、エレンが不満げに声をあげた。それを聞きつけたマーリンは、ピタリと足を止め、俺の手を放す。
 な、なんと! あれだけ振りほどこうとしても、けっして振りほどけなかったマーリンの手が、エレンの一声でいとも簡単に解かれようとは……!
 俺は解放された腕をさすりながらひとり、衝撃におののいていた。
「エレン、コレをあげますからちょっとだけ待っていてくださいね?」
 エレンのもとに舞い戻ったマーリンは、懐からガサゴソとなにかを取りだし、エレンの手に握らせた。
 ん? ……なんだ?
「うん? わ! 飴玉じゃん! ありがとう、マーリンさん!」
 不満に口を尖らせていたエレンが一転し、パァッと花開くように笑う。
 ズルいぞマーリン! エレンを喜ばせるのは俺だけの特権だぞ!
 エレンはカサカサと包みを解くと、パクッと飴玉を頬張った。そうして口内でコロコロと転がして、ほにゃりと相好を崩す。
 なんと……か、かわいい!
 俺はおもむろに、自身の着衣のポケットというポケットをすべてあさる。けれど俺のポケットからは結局、飴玉ひとつ見つけ出すことはできなかった。
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