海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!

 ……さもありなん。俺はこれまで、甘いものを好んで口にはしなかった。悔しさにわなわなと湧き上がる震えをこらえるように、固く拳を握りしめた。
 同時に俺は、涙と共に決意した。次の寄港地に着いたら、ポケットに入りきらないほどの飴玉を買う! そうして常に、ポケットからあふれるほどの飴玉を持ち歩く!
 ――むんずっ。
 イテッ。
「さて船長、忙しく妄想をふくらませているところにアレですが、少々こちらへ」
再びマーリンに腕を掴まれた。しかもマーリンは、あきらかにその力加減を間違えている。
 マーリンの剛腕にズリズリと引きずられながら、チラリと肩越しにエレンを振り返った。エレンは飴玉を味わうのに忙しそうで、俺とマーリンが連れ立っていってしまっても、今度は不満の声を上げることはなかった。

「船長。俺は、世話係に徹してください、と言いましたよね?」
 船首寄りの甲板デッキから、男ふたり並び立って大海原を臨む。……ふむ、色気もへったくれもないな。
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