海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
容赦なく腹に食い込む肩が、問答無用で私を黙らせた。
私はそのまま、アーサーさんに担がれて港を突き進んだ。先程とはまた違った奇異の目が、方々から注がれていた。
だけど途中で、ふと気づく。
アーサーさんが、すっかり怖くなくなっている。今のアーサーさんが醸し出すのは、初対面の時と同じ、穏やかで居心地のいい空気。
……そうそう、これこれ。
初対面の時もさ、なんか初めて会った気がしなかったんだ。不思議と、アーサーさんなら信用できるって、そう思った。
だから私は、乗船をやめさせようとするアーサーさんに食い下がった。
私はアーサーさんに負担をかけないよう、フッと力を抜いた。そうして一昨日の、アーサーさんとの初対面に思いをはせた――。
一昨日、私は乗せてくれる船を探すため、港に来ていた。
港には多くの船が泊まっていて、私はどの船に乗船交渉を持ちかけようかと考えあぐねていた。それというのも、幼い日に父ちゃんに聞かされた通り、船乗りと呼ばれる人たちの柄の悪さは、港に一歩足を踏み入れた瞬間から感じていた。