海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
乗る船の選択を誤れば、本気で命に係わるだろうと、容易に想像がついた。
そんな時、声をかけてきたのが、アーサーさんだった。
見上げる長身に、鍛え上げられた逞しい体躯。清潔に整えられた金の短髪に、深い湖面みたいな青い瞳。彫りの深い整った目鼻立ちをしたその人は、文句なしに綺麗だった。
一瞬、天から舞い降りた軍神が人型を取ったのかと、本気でそんな想像を巡らせた。
だけどアーサーさんに商船の船長だと告げられて、軍神は冗談にしても、これは神からの啓示に違いないと思った。
事実、私が乗船交渉を試みれば、すぐにアーサーさんの美しさが、その見た目だけにとどまらないことを知った。
こともあろうかアーサーさんは、船に乗るのをあきらめるようにと、切々と説き始めたのだ。
その真摯な様子を見れば、アーサーさんの清廉な人と成りは疑いようがなく、私はなんとしても、アーサーさんの船に乗りたいと思った。
「これが乗船証だ。出航は明後日、時間厳守だから遅れるなよ」