海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!

 仰ぎ見たアーサーさんの、真剣そのものの表情に息をのむ。なんの冗談だと、喉まで出かかった言葉ものみ込んだ。
「……血だけでいえばそうだ。けれどヘレネはわしを父と慕って育ち、わしもヘレネを我が子と思って育てた。ならばヘレネはわしの子も同然。そうしてエレンもまた、わしの孫も同然だ」
 爺さんは、否定しない。
「……嘘、だろ」
 爺さんが、私の祖父さん……?
「なにが嘘なものか。ほんの嬰児の時から、わしがヘレネを十八年、海上で寝食を共にしながら育ててきた。けれど十八歳になった時、ヘレネは陸での暮らしを望んだ。わしはヘレネの懇願に折れ、旧知で信用のおける男とその妻にヘレネを託したのだ。結果はまぁ、少々意図しない流れではあったが、ヘレネは男の息子と所帯を持ち、そうしてエレン、そなたが生まれた。毎年受け取るそなたの絵姿を、わしはどれほど楽しみにしていたか。会うことこそ叶わなかったが、年々美しい淑女へと変貌を遂げてゆくエレンの絵姿に、わしの選択もまた間違っていなかったのだと思えた……なのに、なのにっ! エレン、なにがどうなってそのように見るも無残な姿にっ!?」
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