海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!

 気の毒なくらい、爺さんが打ちひしがれている。あまりの憔悴っぷりに、なんと言葉をかけたものかと思案した。
 ……爺さん、よっぽど母ちゃん可愛さに目ぇ曇ってんだなぁ。
 だって、ちょっと冷静に考えればわかる。
 絵姿ってのは、当然のことながら動きもしなけりゃ、口もきかない。そんなんでどうやって、淑女だなんてわかるっていうんだよ。
 そんなんは、爺さんの願望が見せた幻だ。
「なぁ爺さん、残念だけど俺さ、もとからこうだよ。その絵姿ってのはさ、年に一回母ちゃんが俺を取っ掴まえて着飾らせんだ。それでおとなしくしなさいって雪女みたいなおっかない顔で黙らせてるうちに、凍える冷気の中で絵師が一分一秒を争って筆を走らせたんだよ」
「……なんということだ。これでは婿探しにも窮するであろう……」
 爺さんは、愕然とした様子で床に膝を突いた。ものすごく打ちのめされているのが、はた目にもわかる。
 なんか私、年寄り相手に悪いことしちゃったかなぁ。
 だけどさ、少年を語ってる私が婿探しにも窮するもなにも……うん!? ……ちょっと待てよ?
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