海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
少年を語ってるにもかかわらず、さっきから「ヘレネの娘」って、あたり前のように連呼されてなかったか!?
緊張に、ゴクリと喉が鳴った。
「……な、なぁ? 俺の結婚相手って、婿ってことになるのか?」
バクバクと心臓が、壊れたみたいなうるささで鳴る。手のひらは、緊張でじっとりと湿っていた。
「エレンはヘレネ夫婦のひとり娘なのだから、そうだろう?」
爺さんは小首をかしげてうなずき、横のアーサーさんも、さも当然とばかりにうなずいている。
……ガーンッと、頭を殴られたみたいな衝撃が走った。同時に、あぁ、そうだったのかと、そんな理解も降りてきた。
「……爺さん、悪いけど少し、待ってて。アーサーさん、ちょっと」
私は爺さんに一声かけると、アーサーさんの腕をむんずと掴んで船長室の隅っこに引っ張っていった。
「エレン? いったいどうした?」