海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
いぶかしげに、アーサーさんが私を覗き込む。
「……なぁアーサーさん、もしかして知ってたのか?」
「なんのことだ?」
アーサーさんは困惑した様子で、私の震える手に、そっと自分の手を重ねた。
「とぼけるなよ! 私が女だって、知ってたんだろう!?」
目を見開いて固まったアーサーさんの手を、乱暴に振り払う。
「……もしかして私のこと、馬鹿な奴だって、笑ってたか?」
アーサーさんは語気を強める私に向かい、弾かれたように首を横に振って否定する。
「違う、エレンそれは違う」
アーサーさんが私に向かって再び手を伸ばす。私はそれを、身をよじってかわした。
「なにが違うんだよ!?」
アーサーさんは、すごく傷ついた目をしていた。私だって、アーサーさんが他人を馬鹿にするような人じゃないことくらい、ちゃんとわかっていた。
だけどこの時、私はアーサーさんの手のひらの上で少年のふりをして踊っていたんだと悟った。そうすれば、自分自身がすごく滑稽に思えて、冷静さを失った。