海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
エレンの言葉にギョッとして、間髪入れずに問いただす。
「うーん、そもそも私って、家庭に入って子供を生んで育ててって柄じゃないことと……」
ここでなぜか、エレンが不自然にもじもじと恥ずかしそうにして言いよどむ。そんなふうにされてしまっては、ますます気になって仕方なかった。
「エレン!? 柄じゃないことと、それからなんだ!?」
「んー、父ちゃん以上にいい男なんて、出会えないって思ってたからな」
耳にした瞬間、固まる。
けれど固まったのは、俺だけではなかった。ローシャル伯父上も、マーリンも、顎が外れそうなくらい、あんぐりと口開けて阿呆面をさらしていた。
「だ、だってさ! うちの父ちゃんって、優しくてマメで、ものすごい懐が深いんだ! 父ちゃん以上の男に出会えれば別だけど、そうでなくちゃ結婚なんて考えらんないよ!」
エレンが早口でまくし立てるが、周囲の動揺は深まるばかりだ。
「あ、あれ? なんだよみんなして、ボケっとしちゃって」
エレンがキョロキョロと周囲を見回して、首をかしげる。