海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!

 涙をのんでかわいいエレンの頭をなでていれば、船長室を出がけに、おもむろに擦り寄ったマーリンが耳元でささやく。
 マーリンの悪い笑みは憎々しいが、正論だからして反論の余地もない。ちなみにこれは、日頃の働きに敬意を表した助言でもなんでもなく、日頃の鬱憤晴らしというのが正しいに違いなかった。
 ……マーリンめ、いつかエレンの心を手に入れて、目に物を言わせてやる!
 遠ざかるマーリンの背中に内心でほえながら、俺はこの先に続くであろういばらの道を思い、込み上げる涙をのんだ。

 夕刻には早々に、マーリンから調書の一部が上がってきた。
「船長、こちらが今日いっぱいかけて行いました聴取の記録になります。まだほんの触りだけですし、内容はこの後精査しますが、一応お渡ししておきます」
「あぁ、ご苦労だった」
 受け取って、パラパラとめくる。
 調書の最初の頁は、ローシャル伯父上の積み荷に関する内容だった。
「なんだこれは? 黒っぽい岩、白っぽい岩……?」
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