海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!

 エレン可愛さに、邪険な態度を取った俺が言わせなかったのか!?
「アーサーさんどうしたんだ?」
 エレンが可愛らしく小首をかしげて問う。しかし、今の俺には目の毒以外のなにものでもなかった。
 俺は泣く泣くエレンを横に下ろし、俺自身もよろよろと身を起こす。
 しかしここで、俺の脳裏にひとつの希望の光が灯る。
 ……そう、エレンはかわいい。可愛すぎるくらいに、かわいい!
 鬼熊の戦神とはその名の通り、熊のような風貌の父子であったと言い伝えられている。
 ならば、こんなにもかわいいエレンの父親が熊だなどということが、あり得るのだろうか? たまたま七宝を入手した父親がエレンに渡しただけということも、十分にあり得るのではないか!?
「……エレン、エレンの父上はその、熊のような風貌をしているのか?」
 緊張にゴクリと喉を鳴らし、俺は一縷の望みを賭けて、問うた。
「うん! そうそう! 父ちゃんは熊みたいに大らかで優しいんだ!」
 ……エレン、それはなにか間違えている。熊とは獰猛で、俺とて身ひとつで前に飛び出せば容易に餌食だ。
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