海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
なんと! 眠るまで、エレンがそばで添い寝を!?
……う、うれしいが、ものすごくうれしいのだが、それは朝まで一睡もできないのが確定したのと同義。この一カ月で俺は身に染みて知っている。
「アーサーさん、いつまでも百面相してないでほーら」
エレンがトンッと俺の胸を押す。俺はエレンに促されるまま、ポフンと仰向けに寝転がる。
すると上から、スッと影がかかった。その直後、俺の額にふんわりとやわらかな感触が落ちた。
そこから熱は、全身に広がった。かつてないほどに、ドクドクと脈が速く刻んでいた。
「今日は特別な? これさ、よく眠れるおまじないなんだ!」
エレンが唇に人さし指をあて、はにかんだ笑みを浮かべた。さくらんぼのようなあの唇が触れたと思えば、天にものぼる心地がした。
「エレン、ありがとう。おかげでよく眠れそうだ」
とてもじゃないが、朝まで一睡だってできる気がしなかった。
それでも俺は、こんな甘やかな責め苦がこの上もなく愛おしいと感じていた。眠れぬ夜長の入口に微笑んで、俺はそっとまぶたを閉じた。