海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
「き、気持ちわ、……ッゥオェエッ」
「エレン! 無理に話そうとしないでいい! 静かに、安静に!」
「ゥェエエッ!」
 絶え間ない嘔吐が、静かにする間なんて与えてくれない。私は涙やら、口にしがたいあれやこれやで顔をぐちゃぐちゃにして、泣きながら吐いた。
 上甲板中に、私の盛大に嘔吐する声が響き渡っていた。
 挨拶や自己紹介の言葉を口にするよりも先に、その口から吐瀉物をまき散らすという体たらく。乗組員全員の白い目が、背中に突き刺さる。だけど今は、そんなことを気にする余裕もなかった。
 身の置き所がないとはまさにこのこと。吐いたって、ちっとも楽になんてならない。絶え間なく続く揺れは無限に吐き気を誘発し、あげくの果てに私は、吐きながら気を失った。

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