海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
私はやっと、自分が船上にいることに思い至った。同時に、吐きまくって気を失った失態も思いだした。
ん!? ……ここでふと、気づいた。
「これ! 私のじゃない!」
あれやこれやで、汚れていたはずのシャツが、きちんと洗われたシャツに替わっていた。サイズの合わないぶかぶかなそれは、わざわざ袖口が何重にも折られていた。
弾かれた様に、シャツの襟ぐりを引っ張って覗き込む。
「……これならたぶん、バレてない、よな?」
肌着のアンダーシャツと、その下に巻きつけていたさらしは、そのままだった。
「うん! そもそも、この鶏ガラみたいな体を見て、なにを気づかれるっていうんだよなぁ!? あぁやだやだ、私ってばいらない気ぃ、回しちゃったぜ~。よっこらしょっと!」
私はひとりで納得し、寝台から床に足を下ろした。お昼の出航から半日近く横になったおかげだろうか、ありがたいことに、吐き気はすっかり治まっていた。
私は寝台の木製柵を支えにして立ち上がった。ふらつく感じは、しなかった。
――コンコンッ。
部屋がノックされるのと、扉が開かれるのは、ほとんど同時だった。
「あ、アーサーさん」