海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
父ちゃんの手はかわせても、アーサーさんの手はかわせる気がしなかった。事実、私の抵抗は容易に封じられている。
その力強さが頼もしくもあり、落ち着かない思いもした。
「平気って、言ってるじゃんか」
矛盾する落ち着かなさをごまかすように、唇を尖らせて不満を漏らせば、オデコにコツンと小さなゲンコツが降ってきた。
「だーめーだ! いい子だから、まだ寝ているんだ!」
ムムムムッ!
手加減されたゲンコツは、これっぽちも痛くなかった。だけど私は、さすがにちょっと釈然としない!
「でもそれっておかしいぞ」
「ん?」
作戦を変更した私は、ぶつくさ不平を訴えるのをやめて、整然と切りだした。
「船に乗る時にアーサーさんが言ってただろう? 船の上では体調不良もなにもない、各々与えられた役目は絶対だって。俺、初日の今日ってたしか晩飯当番だろ? 厨房に行くよ!」