海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
「聞いてますか、船長!? 馬鹿も休み休み言ってくださいよ!? 交代だといって船長自ら飯当番を交代するあほうがどこにいますか!?」
「グエッ!」
 ずかずかと大股で厨房内に入り込んだマーリンが、俺のエプロンを容赦なくうしろから鷲掴みにした。
 首が詰まり、地味に苦しい。優秀なマーリンは、時に乱暴なことこの上ない。
 しかも俺は包丁を握っているのだからして、危ないこともこの上ない。
「ではマーリン、芋はどうする?」
「そんなもの、人手がないなら皮付きのまま食えばいいんです! なに寝ぼけたことを言ってるんですか!?」
 盛大な鼻息と共にマーリンが吐き捨てた。
「……なるほど!」
 これには目からウロコが落ちた。
 芋と包丁を置けば、俺はそのままマーリンに引きずられるように厨房を後にした。
 はて?
 俺を見る当番中の部下の目が、いつもの畏敬のこもったそれとは少々違うような気がした。


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