海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
「で、なんだって船長が当番、買って出るなんてことになってるんです?」
 俺はズルズルと副船長室へと連行された。
 そうしてパタンと扉が閉まっての、マーリンの開口一番。
「いやなに、エレンがいまだ本調子でないようだからな」
 その間にも、俺はマーリンの気迫に押され、一歩、また一歩と壁際へと追いやられていた。
「においます」
「ん!?」
 思わず己の袖を嗅いでしまったのは条件反射だ。
 とはいえ、出航初日からにおうというのは、これいかに? 俺は昨晩もきちんと湯を浴びている。どころか、しばらく潤沢な湯に浸かるのもお預けになると思い、ふやけるくらいの長湯をした。
「これまでの船長はあほうには違いありませんが、こんなわけのわからない奇行で場を乱すような男ではありませんでした。これにはなにか、理由があるはずです」
 ……さてな。
「それは十中八九、嘔吐しまくって失神したあの坊主に関することです。そうですね?」
 さ、さてな!
「……船長? 坊主がいったい、どうしたっていうんです?」
 マーリンがグワッと怒りを弾けさせる。
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