海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
構えていた知らぬ存ぜぬの盾が、木っ端みじんに吹き飛ばされる。
逃げるが勝ちという格言とてあるくらいだ。本来ならば尻尾を巻いて逃げ出したいところだが、いかんせん俺の背面はすでに船壁で、困ったことに逃げ場がない。
しかし、これは言えん。これだけは、口が裂けても言えん!
「ま、別に船長が白状しないなら、坊主を問い詰めればいいだけの話なんですがね。船長も知ってますよね? 俺、前任は情報部隊の所属でしたから、口を割らせるのは得意です」
マーリンの笑顔が今ほど薄ら寒く感じたことなどなかった。
「さすがに、本気でつぐもうとする船長の口を割らせることには自信がない。あなたはどんな拷問にだってけっして屈しませんからね。けれどさて、坊主はどう――」
「言う。俺の口から言う。だからエレンには、手を出さないでくれ」
俺はマーリンに白旗を上げた。