海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!

 そうして浮かび上がったのが、エレンと共に今日の甲板掃除の担当だったトレッドだった。
 エレンの回答如何では、俺はその小僧を海の藻屑と沈めてやろうと、本気で思っていた。
「それがね、なんか話になんなかった。やっぱり日の光にあたりすぎるのは危ないって、つくづく思い知ったよ」
 しかしエレンからもたらされた答えは、よくわからないものだった。
「エレンはその者のせいで、日がな一日甲板に立ち続けることになったのだろう? また、なにか無理を言われたのではないか?」
 俺はエレンのガーゼを取り去って軟膏を塗り込みながら、さり気なく深掘る。状況如何では、小僧を海に沈める可能性も十分に残っている。
 ……ふむ、それにしてもエレンの肌はなんとなめらかなのだろう。今度はこの珠のような肌が傷つくことのないよう、俺が十分に目を光らせねばならんな!
「なんだ、アーサーさんは知ってたんだね。でも今回の一件は、トレッドがどうこうって言うより、俺がつまんない意地を張っちゃったんだ。ほんと、恥ずかしい話だよ。だけどそのトレッドがさ、さっき来た時、相当おかしかったんだよな」
「おかしいとはどういう意味だ?」
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