海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
「んー、無理を言うどころか、その真逆で。いきなり床に頭擦りつけて、どうかお許しくださいだなんて言うんだよ。しかも今後は俺の味方で、誠心誠意尽くすって……。たぶんトレッドはさ、脳みそまで太陽に焼かれちまったんじゃないかな」
 ……なるほど。
 実は、俺が聞き取りをしたのは、当時の状況を知る乗組員だけではなかった。
 すべからく情報に精通するマーリンにも、トレッドについて水を向けていた。するとマーリンは、トレッドのことをよく知っていた。
 マーリンはトレッドについて、「腕が立ち、頭脳も明晰で、本来ならばすぐにでも隊長クラスに抜擢すべき人材です。けれど彼は突拍子もない発想で、斜め上を行くことが稀にある。正直起用の判断に迷っています」こんなふうに評した。
「そうか。まぁ、焼かれた脳みそが回復するか見ものだな」
 そういうことならば、海の藻屑に関しても、判断には若干の猶予をくれてやろう。しかしこれはあくまで猶予であり、海の藻屑と沈まされぬよう、精々言葉通りエレンに尽くすがいい。
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