海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
「なに、エレン。それは気の回しすぎだ。俺はこれ以上ないほど健康体だ」
 ……そう。
 口にはできないあんなところまで、いっそ元気すぎるほどだ。
「ふぅん。ならいいけどさ」
 精いっぱいの虚勢でかぶる紳士の仮面。けれどそれとて、いつまでかぶり続けられるか……。
 俺はつらい。エレンは可愛すぎる。あまりにも可愛すぎて、俺は苦しい。
「ああ、それからエレン。今後エレンは、俺の小姓として働いてもらうことになった」
 しかし、エレンをみすみす狼の群れのごとき大部屋に放り込むくらいなら、喜んで俺が眠れぬ夜を買って出よう。
「そのコショーってやつ、たしかトレッドも言ってたな。アーサーさん、そのコショーってなんだ? ピリッと刺激的な、あのスパイスのコショーとは違うのか?」
 なんと、エレンはうまいことを言う! エレンとはまさに、俺の人生にハラハラドキドキとした刺激をもたらす、スパイスのようではないか!!
「同じようなものだ。船長という俺を、エレンというスパイスに助けてほしくてな。俺付きで、働いてはくれないか?」
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