海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
「わかったよ! 俺、アーサーさんのコショーになるよ! 俺の実家は商売やってたからさ、釣銭の計算に売上金の集計まで、俺が父ちゃんに代わって算盤を弾いてたんだ。そういうことなら俺、役に立てそうだ!」
 満開の花のような笑みは目にまぶしくて、俺は目を細め、恍惚としてエレンに見入った。
 ……とても、不思議な心地だった。
 俺はこれまで、船長としてはもとより、殿下より拝した職務を全うせんと自らを律し、心技体を鍛えてきた。
 けれどエレンを前にすれば、俺を培ってきたそれらすべてが容易に霞む。職務をないがしろにしたいというんじゃない。ただ、エレンという少女がまばゆいほどの存在感でもって、俺に新しい世界を臨ませる。
 いつかエレンと、そんな新たな世界へと踏み出せたなら……。あぁ、想像だけで体がカッカと熱くなる。
「そうか、やはりエレンに頼んでよかった。これで俺の船長業務も百人力だ」
 なんとか平静を取り繕い、俺はエレンに向かってスッと右手を差しだした。
「ではエレン、これからどうかよろしく頼む」
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