海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
その晩も、俺はエレンと攻防戦を繰り広げていた。
「ハァ!? なんで今晩も俺がここで寝るんだよ!? そんなんおかしいだろうよ!?」
エレンが俺に可愛らしく牙をむく。
「なにを言っているんだ? 小姓と言うのは常に主に付き従うもの。別室に眠ろうなど、それこそが職務怠慢だ」
「なっ、なんだよそれ!? 俺、やっぱやめる。俺、アーサーさんのコショーやらない!」
エレンが爪を立て、毛を逆立てて俺を威嚇する。
人慣れしていない子猫のようなエレンの姿は、内心で身悶えしそうなくらいにかわいい。
「まぁ、とにもかくにも船乗りの辞書に、反故という文字はない。さぁ、いつまでもピイピイと囀っていないで寝るぞ?」
「ぅ、わぁっ!?」
脇の下にヒョイと両手を差し入れて、エレンを持ち上げて寝台にぽふんと落とす。エレンは風のように軽い。
持ち上げた瞬間にふわりと立ちのぼるエレンの香りに、胸が切なく高鳴った。