365日のラブストーリー
 神長は困っているときにいつも手を差し伸べてくれるのに、自分は話ひとつ聞いてあげられない。役に立てそうなことのひとつも思いつかない、回転の遅い頭が嫌になる。

「これまでinnocenceを使っていて、どこか調子の悪いところはありましたか?」
 気を利かせてくれたのか、神長から話題を戻してきた。

「いえ、ぜんぜん。いつもわたしの期待以上で、驚いているくらいで」

「そうですか。日本語はベータ版なので、使っていただいて助かります。会話の精度が上がれば、データも正確になるので」

「あの、それが少しでも神長さんの役に立つなら、わたしずっとずっとinnocence使い続けますから」

 有紗が言葉に力を込めると、神長はどこか呆気にとられたような表情で「ありがとうございます」と頭を下げた。

 テーブルに朝食の支度が整ってからは、まだ寝ぼけている五感をフル稼働させて、食事に専念した。
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