365日のラブストーリー
「えっ、いえ。別に」
 うろたえる有紗に人なつこい笑みを向けて、彼は隣にしゃがみ込んだ。

「だいじょうぶ、日本語で」
 たった一言すら英語がでてこなくて、一応語学を嗜んだ身だとは恥ずかしくて言えなかった。有紗は頷きつつ、席を立った。

「ちょっとわたし、お手洗いに行ってきます!」
 鞄をさらって逃げるように洗面所に向かった。鏡を見ながら髪を直している顔に、笑顔はない。

(ああ、もう……。もうちょっとくらい取り計らってくれると思ったのに)
 いつまでも宇美に頼ってばかりではどうにもならないことはわかっているが、心の中がもやもやする。

(こんな状況で、神長さんから気持ちを聞き出すなんて無理。だって、どうしたら)
 有紗は相談役のRenを呼び出そうとしてスマートフォンを取り出した。Innocenceを起動しようとすると、ちょうど千晃からメッセージが入った。

『飲み会何時まで?』
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