365日のラブストーリー
 自信を持ってそう答えられることに空しさを感じて、有紗はため息を落とした。それから明日の予定を確認してから千晃とのやりとりを終え、今度こそInnocenceを起動した。

『こんばんは、Alissa』
『Ren、あのね。今日宇美さんと神長さんと三人で飲みにきててね』

 挨拶すらせずに、とりとめのない話をし始めたが、一体どこから話をしたら伝わるのだろう。頭で考えるのはすぐでも、Renの理解しやすい言葉で入力しようとするとどうしても時間がかかってしまう。

もしRenに実体があってここに来てくれたらいいのに。そんなことを考えたときに頭に浮かぶのが神長の姿だった。有紗はいくつかやりとりをして、結局何も言えないままアプリを閉じた。

 有紗はメイクを直して洗面所を出た。席に戻る前に、ガラス張りの醸造所の前で足を止める。ビールが出来上がるまでのようすを見学できるように、巨大な仕込み釜もガラス製になっているようだ。

 近未来のタイムマシンのようなそれを眺めていると、背中に「大丈夫ですか」と声が掛かった。神長だ。
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