365日のラブストーリー
 これまではそれが当たり前だったのに、神長と一緒にいて、ひとたび彼の視点を知ってしまうと、何も感じないということは難しい。

 有紗はフォークでケーキの端を小さく切って、口の中に入れた。絞りたての牛乳のような自然な甘さの生クリームと、イチゴの酸味がふんわりと広がった。ゆっくりと味わいながら食べきって、コーヒーを一口飲む。

「甘いものを食べてるときの有紗ちゃんって幸せそうだよな」
千晃が顔を覗き込んできた。

「すみません、たぶん馬鹿みたいな顔してますよね」
「いや、すげーしたくなる」

「何をですか?」
「セックス」

「えっ」

 ただ食べているだけなのに、なぜそんな風になるのだろうか。冗談かと、有紗は隣に視線を向けるが、千晃は大真面目な顔をしている。

「初めてでも痛くならないように色々と準備はしてあるよ。気持ちよくなれなかったら意味ねーし」

 相手を知る手っ取り早い方法は、身体を重ねること。神長はそう言っていたが、千晃にも相手をよくわかりたいという気持ちがあるのだろうか。
< 252 / 489 >

この作品をシェア

pagetop