365日のラブストーリー
 有紗は言われるがままにぎゅっと目を閉じた。一度だけ軽く唇が触れて、そのあとは千晃の手のひらが身体をまさぐってきた。

「あの、森住さん」
「なに」

 千晃の手が止まる。有紗はおそるおそる目を開けた。なぜか苦しげな表情をした千晃がそこにいて、有紗の胸がずきんと痛んだ。

 唐突すぎて怖い。そんな言葉は言えなくなってしまった。

「どうした?」
 千晃は目を細めて表情を和ませる。けれどもそれはどう見ても、心からの笑顔ではなかった。千晃の方こそ何を考えているのだろう。

 ほんとうは気乗りしないのではないだろうか。有紗の中にそんな疑念が浮かび上がってくる。

「とりあえず移動するか。俺の部屋きて」

 千晃はソファを立ち上がって、有紗の手を引いた。淡々とした話し方の裏に、なぜだか悲しみに似た感情が滲んでいる気がして、強ばったままの横顔を見つめる。

 視線に気づくと、千晃は不器用な笑みを向けてきた。

(ひとつになれば、森住さんの考えてることがわかるのかな)
 いつかが今になるだけだ。有紗は自分に言い聞かせ、ぎゅっと唇をかみしめた。



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