365日のラブストーリー
「やっぱりちょっと無理があったよな。ごめんね、有紗ちゃん」

 手のひらを差し出された。きっと、自分の気持ちを伝えようとしているのだ。有紗が手を重ねると、千晃はそれを力なく握った。

「俺は、有紗ちゃんの優しさにつけこんでたかも。でも、直感的に『この子だ』って思ったのはほんと。それまではずっと、恋愛なんて無理だと思ってた。子どもは小さいし、周りの同世代みたいにあっちこっち出かけるのも、飲みに行くのも無理。二人きりにもなれないし。でも、有紗ちゃんならもしかして、って思った。何でかはわからないけど」

 思いの丈を吐き出して、千晃は再び肩で息をついた。

「この際だから正直に答えて欲しい。いつの間につきあうことになった? って思ってただろ」
 有紗は促されて顔を上げた。それから神妙な面持ちのまま頷いた。

「強引でごめん。普通の手順踏んだら無理だってわかってたけど、有紗ちゃんを逃したくなかった」
 千晃は眠る心暖の髪を、空いた手でさらりと撫でる。深刻な話と裏腹の安らかな寝姿に、ふと口元を緩ませた。
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