365日のラブストーリー
 有紗が声を掛けようとすると、難しい顔のままスマートフォンを眺めていた神長が顔を上げた。

「ああ、早かったですね」
 切れ長の目尻がほんの少しだけ下がった。

「神長さんこそ」
 まだ十六時前だというのに、日はもう傾き始めていた。

「今日はどうしますか? 綿貫さんはなにかここで見たいものがあったんですか?」
「いえ、そういうわけでは。先日たくさん案内してもらいましたし。ただ、このあたりが好きなので」

「そうでしたか。じゃあ、どうしようかな。少し歩きましょうか」
「あ、はい」

 歩きましょうか、と言った割には、神長は駅の入り口にあるエレベーターを呼んだ。不思議に思いながらも付き従うと、降りた先には芝生の丘があった。

 駅直結の公園なんて聞いたこともない。

「ちょっと、わたしびっくりしました」
「そうですよね、俺も初めは驚きました。ここに来るのは久しぶりです」

 ここはアメリカ山公園という場所のようだ。西洋館や他の公園などへ向かう際の近道にもなっているらしい。暗くなり始めているからなのか、園内にはあまり人がいない。
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