365日のラブストーリー
「まあいいでしょう。俺も話したいことがありましたから」

 一方的に話をすることばかり考えていたが、相手の話に対する心構えなんてなにもない。やはりあの日の千晃との話のことだろうか。

職場での同僚と付き合いながら、神長とデートまがいのことをしていたのだから、それを知れば怒るのも無理はない。これもきちんと自分が受け止めなければいけないことなのだ。

「はい」
 有紗はぎゅっと唇をかみしめて、頷いた。すると神長が顔を背けてふきだした。

「構えるほど深刻な話ではありません。少なくとも、綿貫さんにとっては」
「そう、なんですか?」

「ええ」
 にこりと微笑みかけられる。気を張っていたのに、拍子抜けしてしまった。

(相変わらず、何を考えてるのかわからないなあ)

 再び歩き始めると「寒くないですか」と気遣ってきた。今日は懇意にしていた取引先の人に誘われて、横浜駅近くの和食レストランでランチをしていたのだと言った。

土曜で、昼でもアルコールが入ることがわかっていたから、移動を電車にしたらしい。寒い中歩かせることを申し訳ないと思ってくれているようだった。こういうところはいつもと変わらず、とても紳士的だ。
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