365日のラブストーリー
 有名な建築家が設計した建物のようだ。ツアーでの見学ではなくても気象台での仕事を少しだけ覗くことができるというのも、魅力的だ。

 有紗は千晃と一緒に行った消防博物館のことを思い出していた。そういえばあれも生活に密接した仕事だった。心暖はきっと、気象台も気に入るだろう。

「あ……」
 でもそれももう、自分が考えるべきことではないのだ。それを思い出して、上がりかけていた気持ちが沈んでいく。

「残念ですけれど、行きましょうか」
 神長に促されて坂道を折り返した。手は優しく繋がれたままだ。しっかりとした大きな手に包み込まれていると、ほとんど外の寒さも感じない。

「昔、姉と父と一緒に行きました。このあたりに食事に来て、そのついでだったのですが」
「へえ、なんか、神長さんのおうちらしいですね」

「そうですか?」

「はい。だってうちだったら、食事の前に時間があったら中華菓子のお店を何軒も巡って、近所の人やお友達にお土産を買って、みたいなかんじですもの。子どもってやっぱり親の生き方を基準に育つんだなって思ったら、自分の有りようがわかるというか、残念に思えてくるというか」
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