365日のラブストーリー
(もしかして、これから思い切りぶつけられるとか。……でもきっとそういうことはしない人だろうなあ。少なくともプライベートでは)

 いっそのこと、心がめちゃくちゃになってしまうほど真っ直ぐぶつけてもらいたかった。そうでもしてもらわないと、罪悪感がなくならない。

 足元ばかりを見ながら歩いているうちに、海の見える丘公園に到着したようだった。公園前のバス停には、地図を持った観光客らしき人たちの行列が出来ていた。園内の見学を終えて、折り返していく人の数のほうが多そうだ。

「ここは風があるので寒いかもしれません。よかったら使いますか?」
 言いながら、神長は首に巻いていたマフラーに手をかけた。

「いえいえ、大丈夫です。わたしもストールを持ってきているので。神長さんが風邪を引いたら大変ですから」

 有紗は鞄から大判のストールを引っ張り出した。冬のセールで買った安物だが、生地にはそれなりの厚さがあるから、風よけにはなるはずだ。

「真っ直ぐ展望台に行って、そこで少し待ちましょうか」
「はい」

 再び差し出された手を素直に握って、有紗は神長の隣に並んだ。
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