365日のラブストーリー
 人には話せないようなデリケートな問題に違いない。それを無理矢理聞き出すことはしたくなかったが、有紗はまだ引き下がるわけにはいかなかった。

「じゃあ、嫌いじゃないとか、大丈夫っていうのがわかるような、サインを送ってあげることってできないですか」

「え?」
 坂巻は表情を曇らせたまま顔を上げた。

「それだけでも、神長さんの気持ちが全然違うと思うんです。だって、神長さんにとって坂巻さんは、絶対に必要な人だから」

「仮にそうだとしても、僕がいま神長くんに対してとっている態度が間違っているとは思わない」
 トレイに乗った定食を運んできた店員が、話の間に割って入っていいものかと、一歩引いた場所で立ち止まっていた。

「すみません」
 坂巻は苦笑いを浮かべながらトレイを受け取り、有紗の前に置く。先にどうぞ、と促されたが、いつもなら見ただけでも喜びが湧いてきそうな食事を前にしても、気持ちが浮かなかった。

 有紗は膝の上で硬くてのひらを握りしめている。
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