365日のラブストーリー
 話をした時には興味を示してくれたように見えたのに、あの説得は失敗してしまったということになる。
 千晃は開発が終わって出向元に戻ったが、宇美の提案で来年度から始まる、グループ会社間の異動希望制度を利用して、本社システム課での勤務を希望するようだ。

 今回の仕事に彼なりの手応えを感じたのだろう。本社側としても坂巻の抜けた穴を埋められる即戦力がほしいところで、開発者の受け入れを拒否するはずはない。五月からの異動はほぼ決まりだ。

 社内報用の下書きを作りながら、有紗は思わずため息を漏らしていた。

(あんなにたくさんRenと話して、考えをまとめたけれど。やっぱりわたしには神長さんみたいに人の心を変えてしまうような話ってできないんだなあ)

 有紗はなんとなしにスマートフォンを触り、昨日した神長とのメッセージのやり取りを振り返った。

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