365日のラブストーリー
 神長から想われているのは、泣きたくなるほど嬉しいことのはずなのに、有紗はなんだか悲しくなってきた。会いたくなければ海外まで追いかけてきたりするはずはないし、神長がそれをわからないはずもない。それなのに、なぜ心がすれ違ってしまうのだろう。

「いかないで。ずっとずっと、会いたかったんです。だからもう少しだけ」
 腕を引くと、神長は驚いたように振り返った。

 これまでで、こんなわがままを言ったのは初めてかもしれない。口を衝いて出たほんとうの気持ちに、有紗は動揺した。
 神長は着ていたシャツを脱いで有紗の肩にかける。それから手を繋ぎ直して、歩き始めた。

「あの、どこへ?」
 ロビーを出て街の方角へ向かおうとしているようだ。外はもうすっかり暗くなっている。駐車場に入って人気がなくなってくると立ち止まり、神長は振り返った。

 力を宿した瞳。見つめられると、魔法にかかったように動けなくなりそうだった。頬に手のひらが触れて、唇が重なる。腰を引き寄せられると鼓動が速まって、頭の中が真っ白になる。
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