365日のラブストーリー
 たしか昔も、こんなような質問をされたことがある気がする。初めてキスをしたときだ。

 あのときは恋人という関係に気負いを感じていた。けれども怖かったはずの気持ちはいつのまにかなくなって、気付けばいつも彼を求めている。たくさんの時間を共有して、無防備な心のままで、神長のことを信じられると知ったからだ。

「いえ、たぶん変わらないと思います」
「あなたはきっと恋人の枠を越えて、友人であり、趣味を共有できる仲間であり、家族にもなれる相手だと思っています」

「家族、ですか?」
「前に『一緒に住みますか』と聞いたら、流されましたけどね」
 あれは冗談ではなかったということだろうか。

「ほんとうはこのまま二人で過ごしたいところですけれど。あなたのしてくれたセッティングが無駄になってしまうので戻ります」
 その割には、繋いだ手を離す気配がない。神長はまた歩き始めた。

「神長さん? もしかして、わたしも行くんですか? まだちゃんとお返事をしていないです。わかっているでしょうし、聞く必要はないのかもしれませんが」

「それでは十秒待ちましょうか」
「十秒?!」
「さっきから、催促の電話が鳴りっぱなしなので」
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