365日のラブストーリー
 千晃の解説を聞きながら、有紗はわれながらとんでもないことを言ってしまったと思った。ただ、自分だけで神長をひとりじめをする気はないというつもりだったのだが、周りの受け取り方はそうではなかったらしい。

「ハードルが上がっていきますね。肝に銘じておきます」神長がどこか遠い目をしながらぼやいた。
「ごめんなさい、変なこと言って」

 ああ、やっぱり自分が話すとろくなことがない。困らせてしまっていることを申し訳なく思う有紗の横で、なぜか坂巻は笑っている。

「いいんじゃない、綿貫さんらしくて。神長くんはたぶん、綿貫さんのそういうところにも魅力を感じてるんだろうから」

「これ以上は勘弁してください」
 神長が会話を切って、強引に乾杯を促した。

 もの言いたげな視線を受けても、坂巻は微笑んでいる。二人のあいだでどんな話をしたのかはわからない。けれども関係がこれまで以上に親しげに見えて、有紗はほっとした。
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