恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
(そうだったらうれしいな……。って、違う違う。私、なんでうれしいなんて思ったの?)
うっかり変な感情が頭をもたげ、梓はそれを無理に押し込めた。
自宅の前に到着し、車がゆっくりと停車する。
一樹の手を煩わせないようにと、そそくさと助手席から梓が降りると、回り込んできた一樹は「なんでさっさと降りちゃうかな」と苦笑いを浮かべた。
一樹の中では、女性のエスコートは当然という刷り込みがされているのかもしれない。それは、相手が誰であれ。
「そのヒールにもずいぶん慣れたみたいだな」
「そうですね。あまりふらつかなくなりました」
映画館に向かうときこそピンヒールがゆらゆらとして膝が妙な角度になったが、半日履いて歩き方を覚えたようだ。
「買っていただいて申し訳ありません。ありがとうございます」
あとで代金を支払うと何度か言ってみたが、一樹に頑なに拒否された。
「よく似合ってるよ」
ふっと笑みをこぼしながら一樹の顔が近づき、唇に触れる。