恋の餌食 俺様社長に捕獲されました

右手を上げてひらひらとする。


「一日も早いご結婚をお待ちしておりますので」
「わかってるって」
「本当におわかりですか? いいですか、社長。経営者たるもの……」


いつもの友里恵の説教が始まったと、一樹は彼女に見えないように小さく息を吐いた。

一樹たちは恋人として付き合うようになって、まだ二十四時間経っていない。結婚する気がないわけではないのだ。どちらかといえば、一樹は前向きに考えている方。それでなくとも新婚の弟にあてられていてかなわない立場だ。

友里恵の小言を適当に聞き流しながら、一樹はデスクの引き出しからファイルを取り出した。


「その話はまた今度。そろそろ向かおう」


今日はこれから、デザインチームとの結婚式場の打ち合わせが入っている。
壁材と床材の確認と、来週早々には現場でのすり合わせの予定だ。

友里恵は腕時計を確認して、非を悔いるように背筋を伸ばす。


「私としたことが。失礼いたしました。すぐに準備して向かいますので、社長はお先にどうぞ」

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