恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
もちろんジョークのつもりだが、梓は「そんな……」と大まじめに困った様子だ。
「梓、観念しろ」
一樹は己の欲するままに、梓を引き寄せ唇を重ねた。
(こんなことが今まであったか? 俺、相当やばい状態だろ……)
梓に対する愛情の膨れ具合を認識して、自分に驚く。
そう冷静に分析していたのは最初だけ。一樹は梓の両脇に手を添えてテーブルに座らせ、奪うような口づけを続ける。
口内をゆっくりとかき回し、激しく舌を絡め合う。そうしているうちに梓から吐息が漏れ、一樹の理性を激しく揺さぶる。
そんな一樹の暴走を止めたのは、ほかでもなく梓だった。
一樹の胸をぐっと押し、唇を離す。
「急ぎの仕事があるんです。すぐに戻らなきゃ」
軽く息を弾ませながら、そう訴える。潤んだ瞳を見て、もう一度手を伸ばしかけた一樹だったが、さすがにそこは留まった。
一樹もこれから大事な打ち合わせだ。
「明日の土曜日、空けておくように」
「はい。では、失礼します」
梓は丁寧に頭を下げ、ミーティングルームから先に出ていった。
打ち合わせの場所に到着した一樹が、「社長、どちらにいらしてたんですか?」と友里恵から問い詰められたのは言うまでもない。