恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
「それでしたら大丈夫です。それに、友達としてお付き合いをという話でしたから」
梓は彼女になることを了承したわけではない。友達宣言をしただけなのだ。
ところが一樹は、大きく深いため息をついた。
(……もしかして呆れられてる?)
梓が一樹の顔を覗き込むと、珍しく鋭く睨まれた。
「梓はなにもわかっちゃいないな。男女として付き合う前提で、あっちは友達から始めようって言ってるんだぞ?」
「そうなんですか?」
「そうなんですかって、あのなぁ……」
一樹は膝に片方の肘を突き、手で顔を覆った。盛大に呆れているようだ。
「まぁ、それが梓のいいところって言ったらそうなんだけど」
「……けど?」
梓は、さらに顔を覗き込んでみる。
「無自覚すぎるのも罪だ」
「私、罪を犯しているんですか」